2012年07月03日

『果てなき路』のこと

こんにちは。なんか重くない?、ShUです。今日は止めておいてくれ!

さて今回は『果てなき路』をご紹介。



"road to nowhere"と書かれたディスクをノートパソコンに入れるところからこの映画はスタートします。モニターに映し出されるのは、ベッドにたたずむ主人公の女性。キャメラはやがて画面に寄っていき、コンピュータ内の映画を語りだしますが、唖然とするのはその画面の質が、最初のディスクを入れる手の画質と寸分違わないことです。



映画内映画という触れ込みくらい、観客は予備知識として持っているでしょうから、ここで観客は「ああ、映画と現実の境界線を明らかにしないつもりだな」という見当をつけるでしょう。事実、その後に出るタイトルバックの監督名は作中の「ミッチェル・ヘイブン」になっており、この映画の真の作者であるモンテ・ヘルマンの若気につい微笑んでしまいます。

そう今、若気と書きましたが、モンテ・ヘルマンはこの作品がなんと21年ぶりの映画です。映画ファンならアメリカンニューシネマの傑作『断絶』という名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。事実、この映画を監督時は79歳という高齢にもかかわらず、実に瑞々しいことをやる。例えば、映画の引用など老齢の監督は恥ずかしくてしないでしょうが、『果てなき路』はやる。それも3作品を実際の映画の画面に出す。他にも最新のデジタル機器のをフルに応用したりして、ひねたところがない。映画を撮る喜びみたいなものが映画に満ち満ちているといってよいでしょう。

話を戻しましょう。

“road to nowhere"という映画内映画は、ノースカロライナで実際に起こった事件を題材にして作られている事がわかってくるのですが、この映画の作者はこの実際に起こった事件までも同じ画質で語り始めます。すなわちこの映画には三つの物語が描かれることになります。映画つくりの物語、映画のなかの物語、そして実際に起こった事件。注意深く見ている観客も、こうなってくると最終的にどこにつれられていくのが判らなくなってくる。




このような映画作りをしている監督にデヴィッド・リンチがいますが、この『果てなき路』と『マルホランドドライブ』との相似を聞かれたヘルマンは、その比較に「…う、その意見、少々がっかりした」といい、それに続けてあるヒッチコックの傑作の名前を挙げています。

そう、この『果てなき路』は、あらゆるヒッチコックの映画がそうであるように、複雑でありながら、奇跡的に明晰で、そして悲劇的な結末を迎えることになります。世界中のあらゆる映画を見ているわけではありませんが、このような映画は今世界的に珍しいのではないでしょうか。そしてその甘美な結末は観客をもう一度『果てなき路』に誘うような気がします。




今回は映画の物語的側面からこの映画の魅力を語りましたが、改めてヒッチコックを引き合いに出すと、ヒッチコック映画のすべてがそうであるように、この映画は愛の映画でもあり、そしてこれは見た人にしかわからないでしょうが、映画作りそのものを描いている映画です。ついに事件が発生した後の、ある謎めいたショットをお見逃しなく。僕はここで号泣しました。素晴らしいとしかいいようがない。

そんな大傑作『果てなき路』は7月8日14:30~、10日17:20~、12日19:00~、13日12:30~の4回上映です。なんと九州では、恐らく宮崎のみの公開です。お見逃しなく。




Posted by mffスタッフ at 20:10 | Comments(0)
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